専門分野の学びとデータサイエンス
建築学部の学びとデータリテラシー・AI
「リテラシー」は、いわゆる「読み書きそろばんの能力」です。「データリテラシー」は、データを読み解き、何らかの処理(そろばん)を行った上で、新たなデータを創造する(書く)能力と言い換えられます。建築学部・建築学研究科の学びとの関係でいえば、建築・景観設計によって生み出される空間を表現するスケッチ、模型、図面などは、電子化されているかどうかを問わずすべてデータといえ、学びで養う能力全体がデータリテラシーともいえます。2021年度から学部1年生の必修科目として共通教育に「データリテラシー・AIの基礎」が新設されましたが、データリテラシーの修得は、共通教育のみでとどまるものではなく、大学院も含めた専門教育全体で養っていくべき能力と考えます。
また武庫川学院の「立学の精神」には「高い知性と善美な情操と高雅な徳性とを兼ね具えた有為な女性を育成する」とあります。「高い知性」は、構造力学や環境工学のように、データに基づき真の答えを求める能力、「善美な情操」は、地域の歴史や文化を踏まえ美しい建築・景観を創造する能力、「高雅な特性」は、建築・景観設計における「読み書きそろばん」において、それを行うことの倫理的な善悪を自律的に判断する能力と考えられます。このように、建築学部・建築学研究科の学びで養うデータリテラシーは、「立学の精神」で修得が求められている能力とも一致します。
さらにAI(人工知能)は、人の手や頭のみでは限界がある「データリテラシー」を拡張するツールと考えられます。AIの基盤となる情報技術の急速な発達は、建築・景観設計の可能性を大きく広げてきましたが、その可能性は今後とも広がっていくことでしょう。学生の皆さんには大学にいる間だけでなく、卒業、就職したのちも、その可能性の拡大に興味・関心を持ち続け、学び続けていただければと思いますし、大学にいる教員もそうあるべきと考えます。私自身は、特に学部の卒業研究や、大学院の修士設計、修士論文におけるゼミや発表会での議論の中で、学生と教員相互が、そのような興味関心を高めあうこともできればと思っているところです。